「SHERLOCK」S1E3「大いなるゲーム」、皮肉屋シャーロックの話。
英語字幕を参照しつつ吹き替えと日本語字幕を行き来していると、こんなこと言ってたんだ! という発見があってとても楽しいです。
先日見付けたのがS1E3、スニーカーに付着した花粉を調べるべくシャーロックが顕微鏡に向き合っているシーン。
人質が命の危険に晒されているにもかかわらず現状を“so delightfully interesting”なんて称しちゃうシャーロックに、ジョンが「死にかけてる人がいるってことを忘れるなよ」と窘める言葉を投げるんですが、シャーロックの返しが以下。
“What for?
There’s hospitals full of people dying, Doctor.
Why don’t you go cry by their bedside? See what good it does then.”
この! 言い方!
三行目の嫌味な反語、吹き替えでは「その人たちにも同情したらどうだ?」とまとめられているんですが、わざわざこんな言い回しで言う辺り辛辣というかシャーロックらしいというか……。“See what good it does then.”……! 訳すなら「それがどんな役に立つか見てみるといい(、何の役にも立たないに決まっている)」という感じでしょうか、この後ろに来ている”then”に何だかすごく興奮するんですが、その理由が自分でもよく分かりません。
そして前半の“Doctor.”にも注目したいです。ワトスンさんを他人に紹介するときDr.Watsonと呼ぶ正典のホームズさんと違って、普段ジョンのことをお医者さん扱いしないシャーロックの、“Doctor”……!
しかもこのときのベネディクト氏の言い方がまた絶妙で、dyingとDoctorの区切りが明瞭なんですよね。わざわざ付け足した感じ。「君も医者なんだから分かってるだろ? 何を今更?」ってニュアンスが感じられてとても良いです。
余談ですがここの「死にかけてる人がいるってことを忘れるな」というジョンのお小言、今回掘り返していて思ったんですが、「場にそぐわない表現を窘める」という行動の一つですよね。
シャーロックを窘めるジョンというと、S2であればE2の「タイミング……」とか、E3の「笑顔はダメだぞ、誘拐事件だ」とかが思い付きます。そしてそのときは、シャーロックもジョンの言葉を受け入れているんですよね。少なくとも反論はしていない。
まだ付き合いの短いS1E3から色んな事件を経て、S2の頃になるとシャーロックの中で何かしら変化があったのかなァと思うとなんだか可愛いです。それがジョンの言わんとすることを何となくでも理解したのか、ジョンの言うことなら受け入れられるようになったのか、その辺はいろんな解釈ができると思うんですが。
そしてこのS2でのジョンの窘め方、シャーロックの感性はそれはそれとして受け入れつつ、でもこの場では止めておこうね、って感じでとても良いなァと思います。ジョンもS1E3を経てシャーロックのそういう立ち位置に悪意が無いのは分かったんでしょうね。誤解を生むから止めような、って呆れ半分な理解の示し方、とても好きです。